15日は、選挙データベース「ザ選挙」運営者で、「マスコミが伝えないネット選挙の真相」の著書がある高橋茂さんを囲みました。長野県上田市出身で、もともとは楽器製作会社ローランドの技術者ですが、いち早くインターネットで情報発信を手がけていました。政治に関心を持ったきっかけは、当時住んでいた安曇野に高速道路が建設される話が持ち上がったこと。反対する知人と一緒に行動していたら、「金が入るから陳情する」議員、自分の田んぼにインターを計画してしまう役人、日帰りが増えることや水脈の分断に思い至らない人々を目の当たりにし、こういう人たちにお任せしてたんだな、とがくぜんとしたのだといいます。
そんな折、2000年、田中康夫さんが出馬して当選した長野県知事選挙があります。出始めたばかりのメーリングリストを試したら、田中さんと直につながって感動。メーリングリストは24時間稼働して情報収集や情報交換に活躍し、高橋さんは「デジタル軍師」と呼ばれるようになります。長野ではそれまで40年間、副知事が知事になるものでしたが、1カ月半でひっくり返してしまいました。「インターネットのおかげだ、とおもしろくなって、つい会社をやめちゃった」
紆余曲折の末、「選挙と選挙の間の4年間が大事」と、政治家の活動を紹介するサイトを開発し、軌道にのせます。市民記者によるインターネットメディア「JanJan」が05年に立ちあげた全国の選挙データベースサイトを技術面でサポート。ところが10年にJanJanが経営難で休止したため、「誰かがやらなければ、と手を上げてしまい」、11年から「ザ選挙」を運営しています。
ネット選挙が解禁されたものの、盛り上がらないと言われますが、地方議員でホームページを持つ人が2013年は3割ぐらいだったのが今5割近くになっており、統一地方選で勢いがつくはずだといいます。たとえていえば、今は水道を引いただけの状態。おふろもトイレも整えるのはこれから、とみています。
前回参院選で、みどりの党から出て17万7千票を取ったけど落選した三宅洋平さんが、ラップを背景にリズミカルに演説する映像を見ながら、ネット選挙の可能性を説いていました。「彼にはことばに力がある。バックの歌にのって伝わる。それがSNSで拡散する」。これは若者の心に響いたようです。政治家は顔より音。アクションカメラや低速度撮影といった技術を上手に使えば、ネット選挙はおもしろく、新しいものが生まれるのでは、と期待していました。